Apr 29, 2019

読んだもの見たもの2019年4月


ラストスパートでは無い!


  • 退屈こそが人間の本質である。退屈であるとは、人間であることを楽しむことである。

暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)
國分 功一郎
太田出版


来週から、暇とは無縁の世界に行くんだけど、こんなの読んでいて大丈夫なんだろうか。
割と分厚い哲学本なんだけど、「我々は妥協を重ねながら生きている。」から始まるあたりチャラくて、気構えず読めて良い。忙しくなるほど読み直したい一冊。
問題が何であり、どんな概念が必要なのかを理解することは、人を、「まぁ、いいか」から遠ざけるからである。
まぁいいかが口癖で、日々妥協しながら生きている私には辛い言葉。一冊読みながら、暇と退屈について考えた経験こそが、これからの人生において暇と退屈と向き合うヒントになりそう。
人間は部屋でじっとしていられず退屈してしまい、退屈する人間は苦しみや負荷を求める。そして何かに駆り立てる動悸が無いことはもっと苦しい、んだそう。自分の生き方を振り返ってみてもあたっているんだけど、それって辛い。著者は人間の本質は、退屈すること、そしてその退屈を紛らわして楽しむ余裕のある「安定と均整」のある状態が人間の本質だと言う。
「楽しむ」ということはどういうことか。
私は「楽しむ」という言葉が好きでよく使うんだけど、楽しむとはどういうことなんだろうか。前に読んだ石川善樹は、どういう状態か説明が難しいと書いてた。余裕がある時人は、思考を強制するものを受け取ることができる。思考を強制するものとは、その人をとりさらって夢中にさせて、考えずには居られずにしてしまうことのことである。心に余裕があって、ものごとを受け取る余裕があって、気づいたら考えられずにはいられない。そんな状態が、楽しむこと、なんじゃないだろうか。というのが著者の意見だと理解した。

しばらく、他律的に忙しくなりそう。ここ数年の退屈を凌ぐために自分が決断して望んだ状況ではあるけれど、奴隷的に忙しくなって余裕がなくなって楽しめなくなるのは嫌だな。。
暇ではなくなるだろうけど、日常生活を、食べる事を、新しいことを知ることを、楽しめる余裕を持って「安定と均整」のある日常生活を送りたい。送るぞ。


  •  「心を知ろうとするときに、知りたいこちらと、知られるあちらを、分けることなどできないのである」
数学する身体 (新潮文庫)
数学する身体 
森田 真生
新潮社

数学とはなにか。数学する、とはなにか。こころ、とはなにか。
「数は、無限の差異に、名前を与える。」手を使って数を数えることから始まった数学が、数千年の歴史を経て、こころに近づく。 数学と身体のつながりを、数学と機械のつながりを、アラン・チューリングと岡潔という二人の数学者による「数学」から考えていく。


読んで考えた事を文章にするのがどうも難しいので、いくつか印象にのこった部分を引用する。
不安の中に、すなわち間違う可能性の中にこそ「心」があると、彼は誰よりも深く知り抜いていたからである。
間違えない機械を作ったチューリングが、”間違う可能性”の中に心があると考えていた。
上の暇と退屈の倫理学の中にも「環世界」の話が出てくるんだけど、この本の中にも。
この「魔術的環世界」こそが、人間が経験する「風景」である。
何を知っているか、どのように世界を理解しているか、あるいは何を想像しているかが、風景の現れ方を左右する。
当然のように、その時のこころの状態とか、その人の経験とかで世界の見え方は全く違うのだけど、時々忘れそうになる。ユクスキュルの「生物からみた世界」とか、コンラート・ローレンツの「ソロモンの指環」とか、高校生とか大学生の頃に面白く読んだ記憶があるけど、また読み直したい。

だからこそ、心を知るためにはまず心に「なる」こと、数学を知るためにはまず数学「する」こと、そこから始めるしかないのである。

まずやってみる、を応援するような一文。心は絶えず変わり続けるものだから、知るためには「なって」みないとわからない。



  • 「「もう帰りたい」そう思えることは、今よりも良い居場所がある、ということ。」
僕たちはもう帰りたい(ライツ社)
僕たちはもう帰りたい
さわぐちけいすけ
ライツ社

来週から帰れない世界へ行くんですがこんなん読んでいて大丈夫だろうか。
今の帰りたくなる場所、大事にしよう。忙しくなっても帰れる場所と人、大事にしよう。






  • 観察して確かめ調整して、また観察。。
人は他人 異なる思考を楽しむ工夫
KADOKAWA

仲良くしたい人や好きな人が異なる考えだった時に、それを楽しむ工夫」を想像して描いたとのこと。利害関係無い人は、距離開ければいいし、考えが違ったとしても無視すればいいけれど。好きな人と考えが違った時、避ける距離置くじゃなくて、なんとなく受け入れてよく見て、楽しめるようになると良い距離感で生きて行けそう。




  • こんな変人、、居たんだ。。。!
菌世界紀行――誰も知らないきのこを追って (岩波科学ライブラリー)
岩波書店

もう辞めちゃったけど。。こんな変人が、この組織でどうやって生きてこれたのか本当に謎。菌学者、かっこよすぎ!






  • 美味い茶が飲みたい
チャイの旅  チャイと、チャイ目線で見る紅茶・日本茶・中国茶 ([テキスト])
ギャンビット

美味いお茶が飲みたい。とろけるほどに甘いチャイが飲みたい。心落ち着く中国茶が飲みたい。(モロッコミントティーはあまり口に合わなかった。)






  •  食べることは生きること。
cook
坂口 恭平
晶文社

うつ状態だった著者が、料理をするなかでだんだんとうつヌケ、していく記録。明日が未来が考えられない状態のとき、料理するということで、なんとなく前向きさを取り戻していく。体調の悪い時は、料理の色もくすんでしまったり、写真と手書きのメモから、生きることへの力が湧いていく様子が垣間見える。
生きるための料理はなんとかしているけれど、楽しむ料理はあんまりしてないなぁ。。




  • 考えることを諦めないための、きっかけ→行動→報酬→きっかけを続ける「小さな問」の習慣。

問い続ける力 (ちくま新書)
問い続ける力
筑摩書房

石川善樹

この人のWIREDの記事とか好きだったので読んでみた。
著者が考える「考えること」についてと、「◯◯とは〜」と考え続ける9人へのインタビュー。前半はWIREDに掲載されたものと、WEBちくまでのインタビューをまとめたもののようだった。インタビューは全部は読んでいないけど次の3人が面白かった。



長沼伸一郎 「次の人類を支える新たな科学は、この男が創り出す:長沼伸一郎(物理学者)」 (関連WIRED記事)

若林恵 (元WIRED編集長)「若林恵氏と考える「人の生き死にとテクノロジー」〜ケアとテクノロジーフォーラムレポート」 (最近の講演)

二村ヒトシ 「性とはなにか。」

これは、図書館で借りたんだけどリクエストする新刊をさくさく買ってくれるの本当素晴らしい。


  • 午前中のプール、東欧の色合い
Swimming Pool
Swimming Pool
マーリア・シュヴァルボヴァー

青幻舎

これも図書館で借りた。"幾何学とパステルカラーの静謐な世界" が、現実だけど現実味がなくて良い。特設ページもあった。
「グランド・ブダペスト・ホテル」とかのウェス・アンダーソンの世界観をだいぶ明るくした感じ。






今季珍しくドラマを見ている「きのう何食べた?」
テーマ曲がとても良い。

OAU「帰り道」 OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND


BLACK PINK がcoachella に出てたけど、すごく本人たちが楽しんでいる感じで良い。

BLACKPINK - DDU DU DDU DU - Live at Coachella 2019 Friday April 19, 2019




今月のKaycee and Sean はこれ。

Netta - "Bassa Sababa" - Dance Choreography by Brian Friedman - #TMillyTV

7:20くらいから。





4月総じて、飛び抜けて退屈なわけでもなく暇なわけでもなく、ある程度余裕もあって、ある程度仕事も忙しくて、良いペースだった。異動に行くかどうかとかいくつか悩むこともあったけど、それも過去を振り返って未来に進むために考えるきっかけとしては良かった。長期的に未来の事考えたり、のめり込むほど夢中になれることがあったわけではないけど、悪くない。

5月、新しい組織、新しい職場、新しい元号、 、いろいろと転機になりそう。人間らしく楽しむ余裕を失わずに生きていけますように。