Mar 25, 2018

CoSTEP 科学技術コミュニケーター養成講座を修了したのでまとめとか。


CoSTEP (北海道大学 科学技術コミュニケーション教育研究部門) の通信講座、というものをこの1年間受けていました。
私が受講したのは選科B。E-learning での講義の視聴と課題提出、そして秋に3日間のライティングを主とした集中演習を受けてきました。いろいろな演習もあって、人によっていろいろな活動をしている講座ですが、私はe-learningで細々学んでいました。
CoSTEPに関する詳細はウェブサイト「2018年度CoSTEP受講生募集」と、動画を参考にしてください。


無事、課題を出し切って修了したので、この間考えたことをまとめておきます。
明日、26日に、来年度募集に向けた説明会&修了者座談会というのに出るので、その前にこの1年間を整理することも兼ねて、いつか受講しようと思う方の参考になれば幸いです。

  • 受講した経緯と応募時に考えていたこと
応募した時にこの講座を通して考えたいと思っていたのは次の2つでした。
  1. どうやって「科学を伝える」ことに携わっていけるか探ること。
  2. 研究所、そして研究支援という仕事を、業務を離れて観ること。
研究開発を支える仕事をして3年になります(就職を決めた時に考えたことの記録)。
仕事や組織の構造、研究開発業界の様子が掴めてきたと同時に、少し外から自分の所属する組織や科学技術というものを考えてみたいと思うようになりました。そして、研究者とは異なる視点と立場で、どう科学技術に携わっていけるかを、もう一度考えてみたいと思っていました(学生時代真剣に考えた研究者にならなかった理由の記録)。
いろいろな立場から、科学技術に携わる方が講師となるCoSTEPは、この2つの目的にちょうど合っていました。

  • 講座を受ける中での喜びと苦しみ
学生時代以来久しぶりに、講義を受けたりして苦労したことや嬉しかったことを挙げてみます。

<苦労したこと>
・週1回、90分の講義を聴く事が大変
・自分自身がどう「実践」するかを求められる約月1回の課題が大変
・講義や、他の受講生の実践と、現実の仕事のギャップが大変

<嬉しかったこと>
・思考する機会、表現する機会が得られたこと
・新しい事を学ぶ喜びを思い出したこと
・近い志を持つ人とのつながりが得られたこと


 受講し始めてまず一番に感じたのは、意外にも「講義を受けるってこんなに能動的なことだったんだ」ということでした。大学院時代には講義を聴くのは受動的でどちらかと言えば楽なことで、研究の計画を立てたり実験したり、資料を読んだりプレゼンを準備する方が能動的な作業で大変でした。一方で就職してからの毎日は、指示を受けて決められた事を早く円滑に処理することが求められる受動的な作業が殆どで、思考したり自分の意見を表明する余地がなかったんだということに気づきました。
 授業を聴くということは、聞きながらどこまでを知っていて理解できているのかを考え、そこから考えられることを頭のなかで展開したり、わからないことを質問する。そういう能動的なことだったことに気づきました。その集中力を要する90分間を、週1回作り出すのが、大変でした。
 また月1回程度、数百字の「モジュール課題」の提出が求められます。課題では常にどう「実践」するかを考えさせられるので、なかなか動けない現実を直視しなければなりませんでした。さらに、受講生がそれぞれ日々実践している「科学技術コミュニケーション」の情報が入ってくる中で、自分自身はどう動いて行くのかを考えさせられました。

 集中演習で北海道大に行き、同じようにE-laerningで講座を受けている受講生と3日間を過ごしました。学生から社会人まで様々な立場の人が集まって、それぞれが書いてきた課題文を読みながら、考えて、理解して、意見を述べて、議論する。そういうごく当たり前だったことが、改めてとても新鮮で、こんなにも喜びだったのかと思いました。
 講義は、毎回新しく知ることがあり、そこから自分で調べて考えたくなる刺激が多くありました。新しく学び理解することは喜びであることを思い出しました。

  • 1年間の講座を修了して

 選科Bライティング演習コースのテーマは「書くことは考えること、考えることは書くこと」でした。課題文等を書く中で、書くことが考えることだと実感しました。また、演習等を通して、書いて伝えることの技術も学びました。講義を通して、応募時の2つの課題も、答えはまだ出ていないものの、考えることができました。

 新しい事を学び、考えて理解することは喜びであること。そして考えたことを表現し、他人と対話することで、さらなる学びにつながること。
 この2つを改めて実感できたことが、CoSTEPを通して得られた成果だったのではないかと思います。講座を通して得られた、学ぶこと・考えることの喜びを、今度は科学技術という題材を通して得られるような場やコンテンツを作ってきたいなと思います。
(と書きながら、実際はなかなか何も動けていないのが苦しいところですが、、受講生の実践している様子を励みに細々進んで行ければと思います。)




読んだもの見たもの2018冬

読んだもの、見たもの記録だけ。


18/03/25 
自動人形の城
自動人形の城
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東京大学出版会 (2018-03-20)
売り上げランキング: 27,990
小説形式で、人工知能による自然言語理解の課題を表現した本。
「人形」を使って、言葉を理解させていく過程がわかりやすい。こそあど言葉による指示をどう機械が理解するか、などの基礎的な課題から始まり、「罪悪感」や「笑い」をどう理解するかといった疑問まで含まれていて。自分の日常を振り返っても考えさせられる。
”「目的」が伝わらないんだよ。”
人間でも目的を伝えられていない人はどこにでも居る。目的の無い仕事を続けるのは、まるで機会のようだと思ってしまう。
”自分が「理解した」と思ったことをうまく伝えられなかったことを、残念に感じた”
頭で理解したと思ったことは、表現してみないと本当に理解しているのか、他の人が理解できるように表現できているのか、分からない。インプットして、理解して、アウトプットする。そしてアウトプットを受けた人がそれを理解したか、理解できるように伝えられたか、フィードバックを受ける。その一つひとつが、「考える」ということだと思う。日常生活で、あまりに「考える」機会が失われていて、まるで機械みたいだ。考えて、表現して、フィードバックを受ける。それが生きる喜びの一つだと思う。
"自分のために生きられない人間が、他人のために生きられるはずがない"
よく聴く言葉だけれど、「自分の意思と価値観をはっきりと意識していなければ、他人のために働くことなどできません。」という言葉は、人形と比較すると明らか。自分の意思と価値観が揺らぐような経験を積み重ねながら形作られていくのが、その人の人間らしさ、なんだと思う。自分の意思と価値観を意識するから、望まない意思と価値観が明らかになるし、望まない意思と価値観を強制させられる環境に長く身を置くことは、人間らしさを奪われていくように感じる、のではないかと思う。

人工知能技術のトレンドが変わってしまう前に読みたい本。

18/03/24 映画
ムーラン・ルージュ (字幕版)
(2015-09-24)
売り上げランキング: 1,517
ニコールキッドマン素敵。ギラギラした装飾も好き。ムーラン・ルージュでインドのイメージが浮かぶのはこの映画のせいだ。途中完全に喜劇。

18/03/16 映画
ココ・アヴァン・シャネル (字幕版)
(2013-11-26)
売り上げランキング: 19,924
オドレイ・トトゥ美しい。Cocoは戦った人だった。かっこいい。そして美しい。

18/03/13
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
カズオ・イシグロ
早川書房
売り上げランキング: 1,826
結末を知らずに読みたかった。生存することの意義。

18/03/11
好きなこのシリーズ。最近ちょっとマンネリ感あるけど、軽くて楽しい。考えちゃうキガタサリノが切な可愛い。

18/02/20
玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ
木下 龍也 岡野 大嗣
ナナロク社 (2017-12-19)
売り上げランキング: 11,710
短歌集。心地良い混乱。もう一度読もう。

18/02/07(アニメ)
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Blu-ray Disc BOX:SPECIAL EDITION (特装限定版)
バンダイビジュアル (2015-12-24)
売り上げランキング: 10,650
これの感想は別記事で書いた。

18/02/03

もしもし、運命の人ですか。 (角川文庫)
KADOKAWA / メディアファクトリー (2017-01-25)
売り上げランキング: 85,982
引き続き恋に疲れている。穂村弘、初めて読んだけど、ひたすらにチャラいな。
「年下も外国人も知らないでこのまま朽ちてゆくのか、からだ      岡崎裕美子」

18/02/02
裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち
太田出版 (2017-02-17)
売り上げランキング: 39,583
沖縄の中部エリアで生きる少女の話。こんな風に入りこんで、話を引き出せるひとって、そう居ない。すぐとなりあった現実。でも知らなかった現実。夢中で読んだ。

18/01/27
AIが変えるクルマの未来
AIが変えるクルマの未来
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NTT出版 (2018-02-22)
売り上げランキング: 53,248
自動車業界の人必読。

18/01/15(アニメ)
わかりやすく深みがあって良い。実物を見に行きたくなる気持ちを掻き立てる力がすごい。

18/01/13
ほかならぬ人へ (祥伝社文庫)
祥伝社 (2013-06-07)
売り上げランキング: 69,055

18/01/11
ニシノユキヒコの恋と冒険
ニシノユキヒコの恋と冒険
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川上 弘美
新潮社
売り上げランキング: 548,127

18/01/08
すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫)
講談社 (2014-11-14)
売り上げランキング: 60,495

愛と美について
愛と美について
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(2012-09-27)
この頃、恋に疲れていた。

(映画)
秒速5センチメートル
秒速5センチメートル
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(2014-12-19)
売り上げランキング: 852
空と光の美しい映画。こういうストーリーが心に響ききらなくなってもうどれくらいになるのだろう。現実は、小説よりも美しくて醜い。どこかで見た、あの時の現実が、もうずっと遠くなってしまった悲しさ。

18/01/06 
「本を読んで得られる最も重要なことは、「本が面白い」ということ、「読むことが楽しい」ということ」という一文に救われる気がした。ゆるっと、でも少しがんばって、でも楽しく生きたいときのヒント。

18/01/01
(映画)
プラダを着た悪魔 (字幕版)
(2013-11-26)
売り上げランキング: 17,566
スピード感、どんどんキレイになる主人公、素敵な服、そしてエンディング。とても好き。

Mar 4, 2018

鑑賞記録 2018冬


2018年1-2月に鑑賞したものの記録。

美しい絵本をつくるインドの工房で、「世界を変える美しい本」という、
tarabooks が作っている絵本を紹介している本を手に入れてから気になっていた展覧会。

世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦


  • 1/6 @沖縄県立博物館・美術館
博物館は好きで、何回か行ってたけれど美術館には初めて行った。東南アジアと沖縄の強いつながりを感じる展示。

  • 1/14 南方熊楠展@国立科学博物館
南方熊楠は、沖縄や日本各地の文化人類学者だと思っていたんだけれど、最強きのこオタクだった。
サンプル採集の方法の現代との比較や、採集しまくった情報をどのように関連付け整理しようとしていたかを、展示していて面白かった。
熊楠もまさか100年後に自分のマインドマップを解析されると思ってなかったんじゃないかな。

玉田企画「あの日々の話」アフタートークは山下敦弘さん(映画監督)
気になっていた北千住BUoYへ。 不思議と心地良い空間。
すごく久しぶりに演劇を見た。「あの日々の話」は、まさに私にとっての学部時代のあの日々にどこかで見たようなシーンばかりで、はじめ不快なくらいのいたたまれなさだった。カラオケに出てきた曲も、登場人物の特徴もあの日々に見た気がするようなものばかりで、以外と自分の学生生活は意外と特殊なものでもなんでもなくて、世代で共通するような要素が散りばめられていたんだなと気づいた。当時、渦中に居ながら苦しんでいたようなことも、こうやって劇化されると最後は笑えてしまって、時間の経過を改めて感じてしまった。映画化されたらまた見に行きたいかも知れない。

テキスタイルと刺繍が好きなので。美しい映画だった。
良い服を一つ、大切に長く着たいと思った。

音楽が好きで。俯きがちな日常に、前を向く力をくれる映画。


滝田ゆうという漫画家を実は全然知らなかったんだけど、たぶんどこかでは見たことがあったはずだけど。やっぱ下町の空気感すきだなぁ。ごく短い期間の限られた場所でしか過ごしていないけれど、もっといろいろな場所や人を知りたくなる。
竹久夢二は、今見てもすごく素敵でオシャレ。きっとおばあちゃんが若いころ流行っていたのかな。
高畠華宵も知らなかったんだけど、描く女性の目つきがみんな魅力的。

国際サンゴ礁年2018 の関連のイベントで。
Netflix作成のドキュメンタリーですが、なかなか心にささる映画だった。
感想はまた別途。


寒いの苦手な冬。そして新しい環境に入ってから3年目の冬。
文字通り、倦んで弛んで、前にも進めず、後ろにも戻れず、なかなかしんどい停滞した日々を送っていますが、好きなもの見に行けてるのでまだ良いかな。暖かくなって焦るけど、倦まず弛まず進んでいきたいところです。