COVID-19の影響で世の中が変化しているなか、45年前のこの本が興味深かったのでまとてみる。
講談社 (1974-01)
「天災にせよ、人災にせよ、人間的要因が、その決定的場面を左右することがおどろくほど多い。(中略)その中でもパニック”群衆要因のもつ隠された、それだけに圧倒的な力”について、われわれあはあまりに知らなすぎる。(中略)本書がいくらかでもその理解と、コントロールに役立てば望外の幸いであり、また災害にむなしく生命を奪われた人たちにむくいる道もあると信じる。」(おわりに より)
②動因喚起:
・紙不足の情報→石油製品の物不足→物価高騰→紙製品が高騰する不足するとういう不安が形成される。
・トイレットペーパー買い占めの報道と空っぽの商品棚の映像、途方に暮れた人々の表情がマスメディアにより流されることにより、他人との同一視が生じ、共感が生じ、同じ動因喚起がされる。
③誘因形成:
・特定のもの(この場合はトイレットペーパー)が、強い誘引価をもつようになり人を引きつける
・報道では、どこでどうすれば手に入れらるかの情報が流される。
→これらの経緯から、相互になんの連絡も打ち合わせもなく、それでいて共通の動因と、共通の狙いを持った不特定多数の群衆が突如出現する。
2.デマの作用力はどう規定されるか
→事態の曖昧さ、不安動因の強さ、内容の適合性によって規定されるデマの力が強く、高くても、プラス情報の強度・直接性・具体性・指示力が十分大きければ、デマの伝播は抑えられる。
3.パニックからまぬがれるための12の条件 (参考文献ブログから引用)
◯感想
パニックの心理―群集の恐怖と狂気
著:安倍 北夫
発行:1974年1月1日 講談社
◯著者 安倍 北夫
- 安倍 北夫(あべ きたお、1922年3月3日 - 2013年8月6日)は、日本の社会心理学者。東京外国語大学名誉教授。
- 青森県出身。東京帝国大学卒。東京外国語大学助教授、1964年教授。1985年定年退官、名誉教授。早稲田大学文学部教授、聖学院大学政治経済学部政治経済学科教授を経て1994年から1999年まで聖学院大学学長。地震・火事などに当たっての災害心理学を提唱した。2013年8月6日死去、91歳没。 (Wikipedia より)
◯目次・概略
「天災にせよ、人災にせよ、人間的要因が、その決定的場面を左右することがおどろくほど多い。(中略)その中でもパニック”群衆要因のもつ隠された、それだけに圧倒的な力”について、われわれあはあまりに知らなすぎる。(中略)本書がいくらかでもその理解と、コントロールに役立てば望外の幸いであり、また災害にむなしく生命を奪われた人たちにむくいる道もあると信じる。」(おわりに より)
目次
1 悲劇は襲う…マナグアの壊滅と大洋デパートの劫火
2 恐怖と驚愕…それからの脱出
3 とっさの危急行動…適応行動は可能か
4 群集の恐怖…パニック行動の論理
5 地下街を襲う恐慌…不安の闇の底で
6 高層ビルの猛煙…脱出を求める人々
7 不安のおののき…回避のパニック
8 情報とデマ…この両刃の剣
9 モッブ・狂気と惑乱…パニックからまぬがれるために
おわりに
◯分析の具体例
1.情報化社会は群衆の生成に好媒体となる
2 恐怖と驚愕…それからの脱出
3 とっさの危急行動…適応行動は可能か
4 群集の恐怖…パニック行動の論理
5 地下街を襲う恐慌…不安の闇の底で
6 高層ビルの猛煙…脱出を求める人々
7 不安のおののき…回避のパニック
8 情報とデマ…この両刃の剣
9 モッブ・狂気と惑乱…パニックからまぬがれるために
おわりに
◯分析の具体例
1.情報化社会は群衆の生成に好媒体となる
- 都市化が進行し、大衆社会が形成される。大量生産・大量消費を基盤として成立した社会は人々の行動様式や欲望が平均化されている
- マスコミュニケーションは①直接的な視覚聴覚映像 ②即時性を持つ ③迫真性と共在制(事件の現場にいるような感覚を人々に持たせる)ため、人々に共通な動因喚起を行い、おなじような行動に駆り立てる。
- 動因の標的となるものについても、共通の誘意価が与えられ、誘引形成される。
トイレットペーパー買い占め群衆の生成
①平均化:水洗便所の普及により、大衆にとってトイレットペーパーが必需品になる。②動因喚起:
・紙不足の情報→石油製品の物不足→物価高騰→紙製品が高騰する不足するとういう不安が形成される。
・トイレットペーパー買い占めの報道と空っぽの商品棚の映像、途方に暮れた人々の表情がマスメディアにより流されることにより、他人との同一視が生じ、共感が生じ、同じ動因喚起がされる。
③誘因形成:
・特定のもの(この場合はトイレットペーパー)が、強い誘引価をもつようになり人を引きつける
・報道では、どこでどうすれば手に入れらるかの情報が流される。
→これらの経緯から、相互になんの連絡も打ち合わせもなく、それでいて共通の動因と、共通の狙いを持った不特定多数の群衆が突如出現する。
2.デマの作用力はどう規定されるか
- 口づて人づての情報は深いリーチと広いカバーを持つ。その情報が誤りだった場合や歪んで伝わるとデマとなる。
- デマは、社会不安から生まれ、社会不安を増幅し、社会不安を再生産し、不安に結節を与えて恐怖に添加し、恐るべきパニックやモッブ(混乱した集団行動)に変わるエネルギーになる。
プラス情報:高い 正確性、直接性、具体性、強い指示性
デマの強さを決める要因:事態のあいまいさ、不安の強さ、不安に実態を与えるような(デマ情報の)適合性の度合い
デマの作用力= ”デマの強さを決める要因”
”プラスの情報の力”
→事態の曖昧さ、不安動因の強さ、内容の適合性によって規定されるデマの力が強く、高くても、プラス情報の強度・直接性・具体性・指示力が十分大きければ、デマの伝播は抑えられる。
3.パニックからまぬがれるための12の条件 (参考文献ブログから引用)
- パニックをなす基盤である群衆に共通の不安、恐怖動因を低減する:予備知識を持ち、対応を事前に学んでおくことが大切
- 当面の不安だけでなく、それが付加される一般的根源的不安をのぞく:不安の総量がパニックを増強するので、解決可能な不安は取り除いておくべき
- 群衆動因の低減:群衆は統制可能な単位に分割するべき
- 群衆行動のキッカケを防止する:戦争の最前線で訳も分からず後方に走り去る兵士が数名出れば、全軍敗走のきっかけになる。パニックを喚起するような言動や行動は抑制するべき
- 群衆相互の間にある暗黙の、あるいは公然たる競争の動因を低減し、除去する:きちんと行列を作らせる、順番待ちを徹底させるなど、秩序を保ち争奪戦の類が起こらないように工夫するべき
- 群衆の中に連帯性をつくり出す:「みんなで頑張ろう」「思いやりが自分も相手も救う」などの呼び掛けも大事
- 自らのなすべき役割りをもつ:ヒトは役割に徹する時に恐怖から自由になれる、古い言葉で言えば「母は強し」である
- 指導者に人を得る:ヒトは不安定になればなるほど、権威あるものにアンカリング・ポイントを求める
- 身体的疲労をさける:疲労は判断力の低下以下多くの問題を招く
- 被災者の間に不公平のないように配慮する:皆が公平に無一物だと差別のない平等を感じるという、だが少しでも差が出ると差別感が生じ不平不満が出る
- 確度が高く、直接的、具体的そして指示力の強い情報を提供する:事態のあいまいさや根源不安の成長を抑止することがパニックの防止に重要
◯感想
- 2020年のトイレットペーパー不足の際には、1973年のオイルショック時とは異なり山積みにされた棚の様子が報道されたり、買い占めする必要が無いことなど、正確性、直接性、具体性、強い指示性のある情報の報道もあり、混乱は少なくなっていた。
- 2020年のこのコロナ災禍においては、情報伝達の方法がマスメディアや直接の人づてに加えて、SNSによる伝達が大きな割合を占めているが、その場合の共通点と相違点を分析したい。
◯参考
(渋谷駅前で働くデータサイエンティストのブログ)