Apr 8, 2019

読んだもの見たもの2019年3月


忙しくなっても続ける。。。ぞ!

  • ファンタジーでチューリングマシンと計算の概念をなぞる

精霊の箱 下: チューリングマシンをめぐる冒険
川添 愛
東京大学出版会









正直なところ、下巻は途中で挫折した。また1年ぐらいして読み直したい。
基本的な「コンピュータ」がどうやって動いているのか、シリコンの結晶から、電気的に計算ができるようになって、プログラムされて動く機械になって、そして「人工知能」といわれるような、"知能" になる。その過程をひとつにつなげて理解したいとずっと思っている。物理も、数学も、情報科学もどれも得意じゃなかったので、基礎が全然なくて専門書や解説書はどうも読みきれない。ファンタジー仕様ならなんとかいけるんじゃないかと挑戦してみたところ。
新人呪術師のガレットともに、「計算」の概念を紐解いていく。ファンタジーのなかに、数学的原理を散りばめてひとつひとつ解いていく過程が面白くて、難しかったけど夢中で読んだ。いつの間にか、ガレットだけが問題が解けるようになって一人置いていかれた。。
上巻の二進法や、情報の符号化については、情報科学の知識ゼロの私もなんとかついていけたけれど、下巻の万能チューリングマシンや、メモリ、暗号に関する部分はもうギブアップでした。。他の本読みながらしばらくしてまた読んだら理解できるようになるだろうか。何か他の方法で理解しないと難しいかもな。


  • 自分をハックする。Well Being な日々のために。


雑誌「WIRED」はここ数年好きな雑誌で、昨年紙版が復活して嬉しいなぁと思っていた。#日本にウェルビーイングを という副題が気に入って買ってみた。WEBでいくらでも良い記事も読める今、あえて紙を使うことを存分にこだわって、活かしている。表紙の質感、開いたときの匂い、ちょうど手にとりやすいサイズ感。手にとって読むこと自体がひとつのwell-beingな体験だった。
とくに印象的だった記事をいくつか。



・「アイデア/ナレッジ/ノウハウ「よい人生とは何か?」をめぐる三段論法」 石川善樹

「well-being ≒ よく生きている状態」 、についてどう考えればいいか整理されている。ウェルビーイングとは状態であること、つまり、その日一日、その一時がいかに良いものであるかの連続である。科学するときの基本だけれど、定義すること、そして測ること、そしてそこから出てくるデータから考えること。ウェルビーイングという状態が、ひとそれぞれに違っているなら、個人のレベルで、私自身のウェルビーイングを定義して、測定することは、よりwell-being な状態へ近づけるヒントになりそうだ。
それから、人生を穏やかにするに役に立ちそうだと思った点について。well-being に関する調査からわかったこと2つについてメモしておきたい。

”1) 「ネガティブ」と「ポジティブ」は異なる概念である”

ネガティブが無いこととポジティブがあることは全く別物であり、ネガティブをいくら減らしてもポジティブが増えるわけではないこと

"2)「体験」と「評価」は異なる概念"

ポジティブな体験もネガティブな体験も、それをどう評価するかはその人自身だということ。

ネガティブとポジティブは対比させて考えがちだけれど、それぞれ独立させて考えたほうが整理がつきやすそうだ。私自身の性格や特性として、ポジティブな体験や前向きな評価について考えることは比較的容易いけれど、ネガティブな体験をまずネガティブだと検知すること、それを評価することが難しい。”ネガティブ”は減っていくのがベストだけれど、検知してどう評価するかを意識していったらwell-beingに近づいていけるんじゃないかと思っている。



地球は「生物圏」から「技術圏」に進化する:「ロボット、動物、あらたなる自然との共生」(3)



地球は、生物が覆い尽くす「生物圏」からテクノロジーが覆い尽くす「技術圏」に変わる。という表現がとてもしっくりきた。




  • 「うしなった人間に対して一ミリの後悔もないということが、ありうるだろうか」

地元に近い景色がでてくると嬉しい。「うしなった人間に対して一ミリの後悔もないということが、ありうるだろうか」。うしなったと思う大好きな人達には、苦しいことは少なく幸せなことはたくさんあって欲しいとただ祈るような気持ち。
「それが安伊子さんのすべてやなかろうもん。」
そのあとに続く、”自分がいやでゆるせんでもうこの先いいことなんかなんもないって決めつけとったけど、それがあたしを構成する全部ではないっちゃなぁ、って我に帰ったと” というのがとても良い。このことに、心の底から気づけたら少し生きやすいんだろうなぁ。


  • 目を背けたい現実に気づきたくないけど、 無視はできない

夫のちんぽが入らない (講談社文庫)
講談社









82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)
筑摩書房








どちらも読むのが辛かった。でも目を背けられなかった。人は社会のなかで生きているから、他人とかかわらずに、社会とかかわらずに生きていくのは難しい。けれど、「普通に」なること、社会が求めるように生きることはきっと苦しくもあって、人と違ってもいいし、普通でなくてもいい。そんな自分も他人も受け入れられるといいな。
近く、濁流のような「社会」に飲み込まれに行く予定だけど、どう生きたらいいんだろう。夏目漱石は「知に働けば角が立つ,情に棹させば流される 意地を通せば窮屈だ、とかく人の世は住みにくい」と書いた。きっと私は、ゆるゆると流されて泣いたり笑ったりしつつ、心地よいところをなんとなく探すくらいで生きていくんだろうなぁなどと思っている。


今月は映画は見ていない。もっぱらこれ。



人気のシットコム。理論物理ヲタクの4人のところに越してきた金髪美女とのドタバタコメディ。始めは研究者をネタにしてるのがあるある過ぎて面白くて見ていたけれど、どんどんどのキャラクターも可愛くて愛おしくなってきて、毎話毎話楽しくてたまらない。しばらくハマり続けそう。一話20分なのも店舗良くて良い。


そして恒例のダンス動画。

  • 等身大なKaycee Rice 


Sleep - Johnny Orlando | Kaycee Rice Choreography

歌のJohnny Orlandoも10代だからか、Kaycee の表情ひとつひとつも動きもとても自然な感じで好き。

  • BLACK PINK がひたすらにかっこ良い


JENNIE - 'SOLO' CHOREOGRAPHY UNEDITED VERSION

BLACK PINK のメンバーJennie の初ソロ曲。ダンスもすごく良いし、曲も好き。MVもとても豪華で良いので別に見て欲しい。
そして、全員でカムバック。



全員かっこよくて可愛くて、良く踊れてとても良い。語彙力がない。


そんな感じでなんとか考えたり楽しんだりできるようになって来た。
周囲の環境変わってもこの調子、このペース崩さずに生きたい。
無理やりにでも本読んで、動画見る時間は捻出したい。




Mar 2, 2019

読んだもの見たもの2019年2月


おかしいな、読み終わった本が無い。

漫画


  • Szégyen a futás, de hasznos.

逃げるは恥だが役に立つ 全9巻完結セット (講談社コミックスキス)
漫画版9冊を深夜に一気読み。ちなみにドラマは1話も見ていない。(当時はとても放送時間には帰ってこられる状況ではなく、帰れたとしても消耗し切っててこんなテンションのドラマが楽しめる精神状態ではなかった。)平匡さんの理系な感じとか周りにいそうだし、みくりさんのモヤモヤとか割と共感してしまった。
「逃げるは恥だが役に立つ」登場人物はそれぞれみんな逃げている事があるんだけれど、時間をかけても、途中立ち止まっても、それぞれの問題に向き合って、それぞれなりの答えを出そうと努力しているところが描かれていていいなぁと思った。流されそうになっても位置立ち止まってみたり、別の方向からトライしてみたり。あまりに辛い時の「逃げるは恥だが」も、その後の「役に立つ」までたどり着く粘り強さもどちらも大事なんだなぁなど。漫画版、3月から再開するらしい。


映画

  • 人間の想像力は映像に引きずられるんだろうか。
ブレードランナー ファイナル・カット(字幕版)
ブレードランナー ファイナル・カット(字幕版)

2019年なので、いままでチャンスのなかったブレードランナーを見た。「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」は好きで昔何度か読んでいたけど、原作になっていたとは知らなかった。これぞSF!という感じ。
随所に日本のモチーフや言語が使われていて、80年代とはどういう時代だったんだろうか、、と考えこんでいた。今SFを作って40年50年後を描いたらきっと中国語とヒンドゥ語だらけになるんじゃないかな。80年代始めの日本は、半導体産業が急成長しそうな兆しがあって、電気機器はきっと日本製ばかりになるんだろう。みたいな未来が見えていたのかな。ストーリーのコンセプトが森博嗣のWシリーズにそっくりだった。電気羊も好きだし、Wシリーズも好きなので、納得。あと、リックがレイチェルを抱くシーン。あれ正直怖いと思ってしまったけど、当時ならあんな感じなのかなー。
昔、子供の頃にSF映画を見るのがあまり得意じゃなかったことを思い出した。怖いからだけじゃなく、映像から得られるイメージが強すぎて、想像力が失われるんじゃないかとか子供ながらに思ってた。テキストから自由に想像できるはずの世界が、映像を見てしまったらそのイメージに固定されちゃうんじゃないか、と思っていた。さすがに最近は、そんな想像力が欠如していくことなんて心配せずにエンターテイメントとして楽しめるようになって気楽だ。(映画以上に想像力思考力を奪っていく事柄が生活に多すぎる。)むしろ映画の映像がヒントになっていろいろ考えたりできるきっかけになっているかもしれない。

  • 屋根があることが家ではない

パディントン(字幕版)
パディントン(字幕版)

知能のあるクマ!パディントンかわいい。
最近イギリス映画をよく見てるけど、長く使われてきた建物や装飾を治して使い続けている家の感じとかとても好き。







  • ノースリーブのAラインワンピースは最高
タイピスト!(字幕版)
タイピスト!(字幕版)

アホ可愛くて楽しいフランスラブコメ。
主人公ローズの着ているワンピースが毎度毎度かわいい。五本指打法が自然にできることに感謝。


映像


  • Why I'm done trying to be "woman" enough

Justin Baldoni | TEDWomen 2017  Why I'm done trying to be "man enough"

 秋頃みつけて何度も見ている。週一で参加しているTED talkを聞いてディスカッションするクラスのトピックにもしようと思っている。フェミニズムや、#metoo ムーブメントは、女性の問題だと捉えられてしまう。TEDwomen イベントで行われたこのJustine Baldoni という役者のトークも聴衆はほとんど女性だし、彼のフォロワーもほとんど女性だったが、彼は男性に向かって語りかける。彼の演じてきた強く男らしい役は、現実の自分自身とはかけ離れていることに悩む。「男らしさ」とはなにか。そして、「男らしく」あることを辞めた。繊細さを他の男性と共有し、心の奥深くを探る。そんな試みをしている。
この前の夏、就職してから意図的に毎日着ていたスカートを止めることに決めた。もちろんスカートもワンピースも好きだから、着たい時には着る。だけど、"女性らしい事務職”を演出するために、スカートを履くことをやめようと思ってそうした。まだまだ道のりの途中だけど、意図的に女性らしさを演出するために着ていたスカートを止めるだけですこし気が楽になった部分もあるし、いくつか気づき始めたことがある。「女性らしく」あることを辞めた私にとって、なぜ彼が「男らしく」あることを辞めたか、そしてその先に何を考えているかは、とても面白く、同時に悩み混んでしまうトークだった。女性らしさを演じて使ってきた自分とどう向き合うか。女性も男性もLGBTsも皆が生きやすい社会にするために何ができるか。男性らしさ、女性らしさではなく、良い「人間らしさ」を持つために、今ここから私は何をするのか。
今ひとつ試してみているのは、負の感情に正直になること。怒り、イライラ、悲しみ、恥、罪、不安、恐怖。女性らしくあるために、優しくおしとやかでいつも怒らずにこやかな自分を演出してきたけれど、それだけではバランスが悪くて苦しくて仕方がない。いままで出さないようにと気をつけていたネガティブな感情に気づくように意識してみている。ポジティブな感情もネガティブな感情も、女性らしさも男性らしさもバランス良くもてるようになっていけると多分よいんじゃないかと思っている。


  • Kaycee Rice が良い
ソロのKayceeのパフォーマンスは、この"Give Me" みたいな感情的なのがすごく良い。
コンセプトビデオの"Electricity" も爽やかさがKaycee らしくて素敵。

Kaycee Rice performs "Give Me" Choreography by Erica Klein - #TMillyTV


Electricity - Silk City & Dua Lipa | Kaycee Rice | Concept/Choreo by Gene Tapia
サムネが最高。こういうポジティブでクリアな踊りが Kaycee らしい。


  • Sean Lewがさらに良い
毎月毎週のように新しいもの出してくれるの本当幸せすぎる。
MEGHAN TRAINORという歌手の公式MV。
Choreographed by Sean Lew, Featuring Kaycee Rice & Sean Lew

Kaycee は服装と髪型のせいかな、曲の雰囲気に比べて幼いけれどSeanの表情がとても良い。

MEGHAN TRAINOR - AFTER YOU (Directed by Charm La'Donna)


  • Sean Lew が撮る Kaycee Rice 

Giving Up - Mark Kovic | Kaycee Rice Choreography



Kaycee の初のフル1曲分のコンセプトビデオ Filmed/edited by Sean Lew前半のシリアスさも、2:00過ぎくらいからの開放感もとても良い。動画の解説にも書いてある伝えようとしているメッセージも良い。


  • "リアルバービーガール"だけじゃないDytto 
Whenever | Dytto x Josh | One-Take Dance


Dyttoは2-3年前にBarbieみたいな見た目とロボットダンスで有名になってたから知っていたけど、 このビデオはとてもかわいい! 1回で撮ってるのも、ダンスもすごいし、後半のNGシーン集もかわいい。


2月。スタックした細々が重石のようで全然動けなかったりしたけどなんとか生きています。読みかけのいくつか面白い本があるけどなんか進まない。逃げるは恥だが「役に立つ」ところまで持っていけるように、なんとか。と思いなが日々過ごしています。


Feb 16, 2019

好奇心を失ったらタコ イカだ!


「海を守るために働くすべての人へ」から始まる タコとイカへの愛にあふれた一冊。
考えるとはなにか、心とはなにかという疑問を考える時、人や脊椎動物とは全く異なる方法で「考える」タコやイカについて書かれている。読んでからしばらく、もし自分がタコだったらどんな気分か、、と考え始めて頭から離れなくなった。以来、タコの刺し身を食べるのがしんどいしありがたいし、なおさら美味しい。



ピーター・ゴドフリー=スミス
みすず書房














タコの心はどうなっているのか。賢いのはなぜか、どこでどうやって考えているのか。
時間がない人はこの著者Peter Godfrey Smithが、googleのセミナーでやったトークを聞けばこの本の大体のことはわかるし、動いてるタコの動画もあるのでよりわかりやすいと思う。あと、googleの人たちがする質問がとても鋭くて、本の内容以上に理解が深まる部分もある。

Peter Godfrey Smith: "Other Minds: The Octopus, the Sea, and the Deep Origins..." | Talks at Google


"心は何から、いかにして生じるのだろう。進化は「まったく違う経路で心を少なくとも二度、つくった」。一つはヒトや鳥類を含む脊索動物、もう一つがタコやイカを含む頭足類だ。哲学者であり練達のダイバーでもある著者によれば、「頭足類と出会うことはおそらく私たちにとって、地球外の知的生命体に出会うのに最も近い体験だろう」。人間とはまったく異なる心/内面/知性と呼ぶべきものを、彼らはもっている。本書は頭足類の心と私たちの心の本性を合わせ鏡で覗き込む本である。海で生まれた単細胞生物から、現生の頭足類への進化を一歩ずつたどれば、そこには神経系の発達や、感覚と行動のループの起源、「主観的経験」の起源があり、それは主体的に感じる能力や意識の出現につながっている。「タコになったらどんな気分か」という問題の中には、心とは何か、それは物理的な身体とどう関係するのかを解き明かす手がかりが詰まっている。知能の高さゆえの茶目っ気たっぷりの行動や、急速な老化と死の謎など、知れば知るほど頭足類の生態はファンタスティック。おまけに著者が観察している「オクトポリス」(タコが集住する場所)では、タコたちが社会性の片鱗を示しはじめているという。味わい深く、驚きに満ちた一冊。"

特に印象に残った箇所をいくつか、記録しておく。

  • 柔らかい体を自在にコントロールする5億個のニューロン
神経系には2つの見方ができるという。一般にイメージするような、目などの感覚器官から脳や脊髄を通じて体を動かし運動させるという、感覚と運動をつなげる働きが「感覚ー運動観」。そしてもう一つが「行動ー調整観」で、行動そのものを調整して、コントロールする働きがあるそうだ。 タコのような骨のない軟体をコントロールするには筋肉をコントロールし調整し、行動そのものを生み出す神経系の機能が必要らしい。

確かに、、もし私の体に骨や関節が全然なかったら、、自由自在に折り曲げたり掴んだり伸ばしたりできるとしたら、、しかも8本も腕や足があって別々に動かせるとしたら、、、って想像してみるとめちゃくちゃ便利で楽しい!だけど、コントロールしなきゃいけない身体が多すぎてパニックになりそう。それをパニックにならずにときには8本バラバラに好き勝手に、時には全身のうちの一部あるいは全部を、ひとつの意思でコントロールして動かせるのが、タコ。すごい、、すごすぎる。(そして筋肉と神経の詰まった足はとても美味しい!)無脊椎動物で、体のすべてが動かせて、さらに吸盤という感覚器官もあちこちについてるタコを、脊椎動物である自分と比べると違い過ぎていて、どんな感じがするのか想像しても想像してもよくわからなすぎる。人間が持ってるようなある程度固定された身体から生まれる認知、「身体化された認知」が、たぶんタコになった気分を考えるときには通用しなくて、変幻自在に変わり続ける体をもった生き物の心はどう動くのか、どう感じるのか。


  • 「内なる言語」を、ちゃんと使えてるだろうか。
4~6章辺り、ちょっと哲学の理論が増えてきて理解するのが難しかった。
考える、とはどういうことか。という疑問を、タコの近縁であるコウイカの身体の模様の複雑な移り変わりをヒントに考えている。途切れることなく移り変わる模様の変化は、全身で"考える"イカの神経の会話が漏れ見えているんじゃないか、と著者は言っている。(という私の大雑把な理解。)

 人の思考はすべてが外に表現されるわけではなくて、脳内で自分自身で会話することができる。文字にしなくても、言葉にしなくても、"考える"ことは、無限にできる。

最近、仕事とか考えるとしんどいこと多くて、できるだけ思考しないで済むように、強い音楽聞いたり、できるだけ何も考えないように努力したり、もはや意識せず考えないようにしてしまっていて、これではイカ以下だなぁと思ったりした。もっと内なる会話、しよう。考えることをやめた先には死が待っている。といつも思いながらダイビングしていたのを思い出した。(思考停止してパニックになったら、実際その先には死がすぐそこにある。)とはいえ、自分の思考や神経の活動そのものが身体の模様になっていて移り変わって見えていたら何も考えてないのも何考えているかも見えてしまって、恥ずかしくなりそう。実際は、イカ本人は自分や仲間の模様はそんなに見えていない?らしいけれど。


  • ”賢さ”をつくるのは、社会性か好奇心か。
タコは、社会性の高い生き物ではない。それでも賢いのはなぜだろう。答えはまだ無いらしい。。一般に人間やチンパンジーなど社会性の高い生き物は賢いと考えられている。一方で、タコの社会性は高くは無いが、賢いエピソードや実験結果は多くある。タコが賢いのは、柔らかな身体をコントロールするために発達した神経系と、好奇心旺盛で冒険好き新しもの好きなところからきているのではないか。好奇心旺盛なのは、雑多な食物をとって食べる狩猟や採餌の仕方をしているからだそうだ。

実験結果や著者がタコを観察していたオクトポリスでのエピソードを知ればしるほど、タコの好奇心旺盛さには驚く。ぜひタコと友達になって話してみたい。そして、タコと話はできなくても、私も生活のなかでの好奇心、忘れないようにしたい。



一冊まるごと、今まで考えたことのないことを考えるヒントに満ちていて面白い本だった。私は読みながら、「タコになったらどんな気分か」とか、「そういえば奥武島でみたコウイカの模様はどんな考え事だったんだろう」とか、「全身軟体動物になったらまず何しようか」とか、「あの時水中で噛みちぎって食べたタコの足は美味しかったけど、ちぎられた方は痛かったんだろうか」とかそんなことばっかり考えていた。

もっと別のところに興味がある人はきっと、人間とは別の"知能”について考えるヒントになりそう。タコや人間レベルになるのはまだ先だろうけど"人工知能"とはなんなのか、どうういう"mind"なのかどうそれをデザインするのか。あるいは今までと全然違う形のロボットやコンピュータについて考える時のヒントになるかも。中央集権的な構成で、人間のような脳に思考する機能が集中してあり感覚器官と運動器官は別についているような、CPUとI/Oが別になっているようなノイマン型のコンピュータ?ではなくてもっとちがう形を考えられるかも。

重版出来!も納得の面白い本でした。

ちなみに、表紙の印象的な絵は、ドイツの偉大な生物学者でめちゃくちゃ絵がうまかったエルンスト・ヘッケル Ernst Haeckel の Kunstformen der Natur 「生物の驚異的な形」から。2014年に和訳新版が出ているので見てみよう。

生物の驚異的な形
生物の驚異的な形
エルンスト ヘッケル