(授業の課題のために書いた小論文の日本語版を乗せます)
1.はじめに
この授業の中での大きなテーマはアイデンティティである。
授業の中で、ハワイの創造神話から、近年の植民地支配から同化政策の歴史を学んだ。このような歴史を経て、さらに多くの国と地域からの移民が集まり、人種のるつぼ、あるいは、サラダボウル、となった。そのようなハワイに暮らす人、‘ハワイ人’のアイデンティティはどのように形成されるのか、ということに疑問を抱いた。それは、親の人種、家族の祖国の、あるいはハワイの歴史文化慣習、所蔵するコミュニティなどを根拠とするのかもしれない。しかし、アイデンティティの形成は多様すぎて、想像がつかない。
そこで、より身近な自分自身のアイデンティティがどのように形成されているか、ということを、以下の4つの観点から比較し、考察する事を、このレポートの議題とした。
観点
1. 日本人のアイデンティティ
2. 沖縄人「うちなんちゅ」のアイデンティティ
3. 沖縄へ移住した日本人「しまないちゃー」のアイデンティティ
4. ハワイ在住沖縄移民のアイデンティティ
4. ハワイ在住沖縄移民のアイデンティティ
2. 自分自身のアイデンティティがどのように形成されているか
1.アイデンティティの定義とは
Dictionary of Contemporary English (Longman) によると
1.
Someone's identity is their name or who they are
2. The qualities and attitudes that a
person or group of people have, that make them different from other people
との定義がなされている。ここから、私は、アイデンティティの形成とは、その個人の人生において、もっとも重要な価値は何なのか、ということを考えることにあると考えた。この考えに基づいて各トピックについて考えていく。
観点 1. 日本人のアイデンティティ
日本語には、アイデンティティの適切な訳語が見つからない。
英語のidentity にできるだけ近い意味を選ぶとすると
同一性 [identity]
③人間学・心理学で、人が時や場面を超えて一個の人格として存在し、自己を自己として確信する、自我の統一をもっていること。 (大辞林 三省堂)
となるが、理解しにくい。なぜそのように感じるのか。理由は、アイデンティティというものが、もともと日本人に無い概念であったためだ。なぜ、日本人にアイデンティティという概念がないのか。私の考える理由は以下の2つである。
①
コミュニティへの帰属を重要と考え、個人が何者であるか、ということが問題にならなかったから。
②
明らかな「他者」に遭遇する機会が比較的少ないから。例えば、外国人など。
つまり、日本人は日本人である、ということに疑問を抱く機会が少ない。そのため、アイデンティティについても深く考えることが無いのではないかと思った。この問題点に関しては、更なる議論が必要だが、今回は割愛する。
さらに、より身近な存在であり、ハワイに似た点を多く持つ沖縄の人々のアイデンティティの形成について考える。
観点2. 沖縄人「うちなんちゅ」のアイデンティティ
沖縄は、ハワイと同様に、独立した琉球王国という国家をもっていたが、日本政府に併合、同化させられた歴史を持つ。そのような歴史のなかでも、沖縄は、日本本土とはかなり異なる、沖縄独自の文化慣習を持ち続けている。
沖縄の人々は、その独自さに、沖縄人うちなんちゅであることに誇りを持っているように感じる。統計的情報が無いので類推でしかない。日本人であると言うことと、同じかそれ以上に沖縄人であるとこを大切にしている人が多い。と、私自身の出身地である東京と比較して感じた。つまり、より身近で狭い範囲の文化や独特さを大切にしているのではないだろうか。
次に近年増加している、沖縄に移住した移住者のアイデンティティについて考える。
観点3. 沖縄へ移住した日本人「しまないちゃー」のアイデンティティ
沖縄県は日本の47都道府県で数少ない、人口増加県である。それは、多の都道府県から移住してくる人々が増えていることを示している。私自身も沖縄に住んで6年になる移住した人々の一人である。
ここで1つの言葉を紹介したい。
「しまナイチャー」という言葉。この言葉は、比較的新しく、日本本土から沖縄に移住し、ある程度長く滞在し、沖縄や島に愛着を持っている人の事をさす。
この言葉の中には、故郷では無い移住地を大切に気持ちと、完全にはその土地の人になりきれない矛盾が見える。
観点4. ハワイ在住沖縄移民のアイデンティティ
先日、ハワイ在住の沖縄移民1世から4世までの人々の沖縄に対する考えを聞かせてもらう機会があった。ハワイに半世紀以上住んでいる、あるいは沖縄には一度も行った事がない。沖縄移民でありハワイ人である。うちなんちゅでもありはわいあんでもある。先祖の故郷である場所はとても大切なものであるようだった。その、先祖の故郷を大切にする気持ちは、他の各地域からの移民においても同様ではないかと思う。
3.まとめ
アイデンティティとは、国家や歴史文化といった大きな枠組のなかにあるものではない。自分自身や家族が、どのようなコミュニティで生まれ育ち影響を受けたかで作られていくものだと思った。ハワイの人々はアイデンティティについて、考える機会が多いのではないか。日本人はそれと比較して、アイデンティティについて考える機会が少ないと思う。しかし、私自身もこれを始めとして、自身の人生のなかで何に価値をおくのかを考え続けたいと思った。